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特集 軽度発達障害Q&A

Q37.軽度発達障害に漢方薬は有効ですか?どのように使えばよいですか?

筆者は1992年に大柴胡湯が自閉症の緊張緩和に有効であることを発見し、それに2、3の漢方方剤を加えることによって、さらに今までにはみられなかった好ましい効果を得るようになった。ちなみに、筆者の扱っている自閉症(児)者はすべて地域の権威ある診断機関で診断されたものばかりである。改善の程度には個人差があるが、服薬開始年齢13歳以下で、治療期間6か月以上の30例について、NRSによる家族の調査で50%以上改善と答えた割合は、睡眠障害 100%(30例中13例)〔( )内は100%改善と答えた数である〕、多動88.9%(17例中8例)、かんしゃく71.4%(14例中5例)、パニック78.3%(7例中4例)、自傷87.5%(8例中2例)、同一性保持77.8%(18例中2例)、強迫的行動68.8%(14例中1例)、儀式的行動80.0%(17例中4例)、聞き分け83.3%(30例中5例)、コミュニケーション80.8%(30例中1例)、会話能力60.0%(30例中1例)、集団参加79.3%(29例中3例)であった。
症例
症例1 男児、服薬開始年齢3歳0か月
診断名
自閉症
症状
1歳9か月ごろからかんしゃくが異常になる。突然噛みつく、夜2、3時ごろにギヤーギヤー叫びながら走り回る。言語なし。
処方
大柴胡湯1包、下痢のため大柴胡湯去大黄1包に変更。
・1か月目: かんしゃく激減、穏やかになる。
・3か月目: ドライヤーや掃除機の音を嫌い母に噛みついたが、平気になる。
・5か月目: 服を脱いでしまう。
処方変更 大柴胡湯去大黄1包半、黄連解毒湯1包
・6か月目: 叱るとパニックになったが、泣くようになる。道順を変えるとパニックになったが、ならなくなる。こちらの言うことがよくわかるようになる。
・8か月目: 黄連解毒湯を飲まなくなる。
処方変更 大柴胡湯去大草2包
・1年目: 機嫌が良い。薬を自分で持ってきて飲む。パズルをよくやる。人真似をする。
・1年6か月目: 平仮名を言うと全部指さす。喃 語は言っているが単語にならない。
・2年目: 聞き分けがよくなる。表情は良いが多動気味である。
処方変更 大柴胡湯去大黄2包、抑肝散2包
・3年6か月目: 養護学校小学部入学、入学式座っていた。教師からコミュニケーションが良いと言われた。
・4年目: 調子は良い。校外学習で電車で遠くまで行けるようになる。
・4年6か月目: 大人量でないと眠らなくなる。
処方変更 大柴胡湯去大黄3包、抑肝散3包
・5年6か月目: 人懐っこくなる。ハイ、ドッチ、キガエを言う。単語の語尾だけを言う。
・6年目: 写真を撮るとき、笑顔でポーズをとる。教師から自閉症とは思えないと言われる。
症例2 男児、服薬開始年齢4歳1か月
診断名
自閉症
症状
物に対するこだわりが強い。単語30語程度あり。コミュニケーション困難
処方
大柴胡湯1包、抑肝散1包
・1か月目: 気分が高揚している。物に対するこだわりが減ってきた。幼稚園で友だちと手をつなぐようになる。
・2か月目: 単語が増える。数を10まで言うようになる。表情が豊かになる。歌をよく歌うようになる。
・3か月目: 言葉らしいものが出始めた。新しい場所での緊張が減った。
・5か月目: 喋り方が自然になってきた。まだ、助詞をよく聞違える。
処方変更 大柴胡湯2包、抑肝散2包
・10か月目: 会話が少しずつかみ合うようになってきた。幼稚園の行事で特別に扱わなくてもよくなる。
・1年目: 劇の台詞をちゃんと言えた。
・1年6か月目: 友だちのほうも関わりやすくなったようで、相手にしてくれるようになる。
・2年目: 幼稚園の先生に自分のほうから話しかけることが多くなる。
・2年6か月目: 言葉で的確なやり取りができるようになる。相撲で自分が勝ちたいと言う気持ちが出てきた。
・3年目: 幼稚園であったことを報告する、男の子と楽しく遊ぶようになる。平仮名を覚えたり、加算をするようになる。時計も分単位がわかるようになる。絵もよく描く。
・3年6か月目: 自分でやりたい気持ちが強く「僕にやらせて」と言う。小学校普通学級に問題なく入学決定。
症例3 女児、服薬開始年齢5歳1か月
診断名
自閉症
症状
言語はかなりあるが、一方的で質間に合った返事はしない。意味不明なことを言う。
処方
大柴胡湯1包、抑肝散1包
・1か月目: あまり変わらない。
・2か月目: 言葉が増えた。何か言いにくることが多くなる。
・3か月目: 同年齢の子と遊ぶようになる。
・6か月目: 意味不明のことを言うことが少なくなる。
処方変更 大柴胡湯2包、抑肝散2包
・1年3か月目: 「おりこうにしてるよ」、「ほんとだよ」と言う。友だち4人の名前を言う。
・1年10か月目: 小学校普通級に入学。
・2年6か月目: 1学期成績良好。かっこ悪い、恥ずかしいがわからない。
・3年10か月目: 3年生になる。
・4年2か月目: 3年1学期成績上位。友だちも多い。リーダーシップをとって遊んでいる。
症例4 男児、服薬開始年齢10歳6か月
診断名
アスベルガー症候群
症状
パニック。強迫行動が多い。友だちから逃げる。体育を嫌う。喘息
処方
四逆散2包(中間証と考えたため)
・1か月目: パニック減少。強迫行為不変。
・3か月目: 何もすることがないとき、自分から何かをすることができない。体育の時間逃げていたが、やるようになる。友だちの中に入れるようになる。
処方変更 四逆散2包、抑肝散2包
・1年目: 運動会。昨年は大変だったが、今年は先生からすごく成長したと言われた。
・1年3か月目: 電話で友だちと約束して、待ち合わせをして遊びに行くようになる。コミュニケーションもほとんど普通になる。
紙数の関係で症例を簡単に紹介するに止めたが、睡眠障害やパニックなど困る症状があると効果がわかりやすい。また、単語でも少し言語があるほうが伸びが艮いが、重度でも指示理解が良くなり、コミュニケーションが良くなるものが多い。服薬開始32歳でもかんしゃくがなくなり、コミュニケーションが良くなっている。
処方の組み方 証によって大柴胡湯、四逆散、抑肝散を中心に(子どもの大部分は実証である)症状によって増量。さらに、抑肝散、柴胡加龍骨牡蛎湯などの柴胡剤あるいは黄連解毒湯、三黄瀉心湯などを加える。薬量をグラムで示さなかったのは、製薬会社によって1日量が異なるが、1日3包になっているからである。
漢方で重要なのは「証」である。これを間違えると効かない。また、治療中に証が変わり効かなくなることがある。その場合は証に合わせて処方を変える必要がある。
睡眠障害やかんしゃくは精神緊張の証拠といえる。これらが改善したことは精神緊張が緩和したことになる。そこで冷静に周囲を見たり、聴いたりできるようになり、関心をもつようになり、模倣が始まり、学習が始まると考えている。ADHDやLDは経験も少ないが、漢方で好ましい効果は得ていない。