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自閉症に対する漢方(日本の伝統的薬草)治療の長期観察症例報告

要約

筆者は自閉症の情緒障害の改善のための漢方(日本の伝統的薬草)を探してきた、そして、1993年に大柴胡湯と幾つかの漢方がそれらの改善に効果的であることを発見した。この報告は自閉症の家族によるこの治療に対する2001年12月の評価である。
調査はNRSの方法が応用された。治療の開始年齢は2才4か月から32才3か月であり、期間は2か月から9年6か月である。対象数は女性6名、男性68名である。50パーセント以上の改善率は男性においては睡眠障害100%、多動92.5%、癇癪88.3%,パニック95.6%、自傷82.1%、突然の暴力89.5%、同じ状態に対する固執74.4%、強迫的行動65.2%、儀式的行動95.5%、理解力86.2%、コミュニケーション85.3%、会話能力32.4%、グループ活動の参加76.2%であった。

1.はじめに

自閉症とゆう障害名は1943年、ジョンス・ボブキンス大学の教授レオ・カナ一によって提出された論文「早期幼児自閉症」が始まりである。時を同じくしてウィーン大学の教授アスベルガーによって「自閉性人格障害」という論文が発表された。現在ではこれらは「広汎性発達障害」の下位分類にまとめられている。
わが国ではこれらの情報は第二次大戦後に導入された。従って、わが国では1952年に国立精神衛生研究所の鷲見が1例報告をしたのが第一号である。私が同研究所に奉職したのが1961年であったが、当時まだこの第一号の女児がきていた。当時はカナーが提唱していた、親の育児の間違いによる情緒障害の一種と考えられていたので、親の指導、特にスキンシップと絶対受容と遊戯療法が中心であった。ところが、カナーが自説を脳障害説に転換したのをきっかけに、多くの原因論や治療法が発表されてきた。
しかし、いずれも決定的なものではなく、現在では自閉症は不治であり有効な薬剤もなく、療育により少しでも社会適応を伸ばすことを目標とすべきであると説明されている。私は当時まだ誰も考えなかった漢方に着目、1965年頃から漢方の勉強を始めた。ところが、漢方の大家で自閉症のことが分かる人がいない。仕方なく精神安定作用があるとされる漢方薬を順に試していったが、何れも望ましい効果が得られないため半ば諦めかけていた。
1992年に緊張が高く、夜間眠らずに騒ぐため家族が困っていた、中学1年の自閉症児が紹介されてきた。精神安定剤と睡眠剤の効果が悪く、増量していると薬物性肝障害が現れた。その治療に大柴胡湯を用いたところ、肝障零の改善ばかりか、あれ程睡眠薬がきかなかったにもかかわらず、よく眠るようになった。さらに昼間も落ち着いてきたのである。これを手掛かりに、症状の特徴によって2、3の漢方を補足することによって、予想を上回る改善が得られるようになった。

この報告は2001年12月以前に漢方治療を受けた自閉症の家族による評価である。

2.漢方治療開始年齢、性別数、治療期間

漢方治療開始年齢は2才4か月から32才3か月、性別数は女性6名、男性68名、治療期間は2か月から9年6か月である。

3.治療開始年令と治療期間と患者数

治療開始年令と治療期間別の患者数を表T.に示した。
Table I. STARTING AGE, TERM of KANPO THERAPY and DISTINCTION of SEX.
Term of Therapy Starting age Female Male
wuthin 1 year under 6 years 1 2
under 13years 0 0
under 19years 0 4
under 25years 0 2
over 25years 0 2
wuthin 3 year under 6 years 0 5
under 13years 1 4
under 19years 0 5
under 25years 1 5
over 25years 1 0
within 6 years under 6 years 0 2
under 13years 0 4
under 19years 0 6
under 25years 1 3
over 25years 0 1
within 9 years under 6 years 0 0
under 13years 0 1
under 19years 1 8
under 25years 0 13
over 25years 0 1
Total   6 68

4.調査方法

調査はNRSの手法を応用した。漢方治療前の状態を0%とし、完全に正常化した状態を100%とし、そして、2001年12月の状態が彼らの家族によって評価された。
評価の項目は13項目である、即ち、睡眠障害、多動、癇癪、パニック、自傷、突然の暴力、同じ状態に対する固執、強迫的行動、儀式的行動、理解力、会話能力、集団行動への参加

5.結果

女性の調査結果は表U.に、男性の調査結果は表V−1.から表V−13に示した。効果の統計的評価はされなかった、プラセボーテストがされなかったからである。表U.から表V−13.までのマークは下の意味である。
Table II. RESULTES of INVESTIGATION on FEMALES.
Starting age 3:8 20:04 6:08 25:6 24:10 14:6
Term 0:9 1:4 2:2 2:9 4:5 6:3
Sleeping disorder NP +++ +++ +++ ++ +++
Hyperkinesis NP NP +++ +++ ++ +++
Tantrum NP +++ +++ ++ ++ +++
Panic NP +++ +++ ++ +++ +++
Self-injury NP NP NP NP +++ +++
Impulsive violence NP NP NP ++ NP +++
Adherence to samness NP NP NP NP NP  
Obsessive compulsive behavior NP NP NP NP NP NP
Ritualistic behavior MP NP NP ++ NP ++
Comprehension ++ ++ +++ ++ ++ ++
Communication +++ ++ ++ ++ ++ ++
Conversation ability ++ ± + ± ± ++
Participation in group activities ++ ++ ++ ++ ++ ++
Table III. RESULTE of INVESTIGATION on MALES.
Table III-1. SLEEPING DISORDER
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 16 38 11 3 0 0 0 52 52
% 23.5 73.1 21.2 5.8 0.0 0.0 0.0   100.0
Table III-2. HYPERKINETIC
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 28 5 13 19 1 2 0 40 37
% 41.2 12.5 32.5 47.5 2.5 5.0 0.0   92.5
Table III-3. TANTRUM.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 8 9 15 29 2 3 2 60 53
% 11.8 15.0 25.0 48.0 3.3 5.0 3.3   88.3
Table III-4. PANIC.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 23 11 12 20 2 0 0 45 43
% 33.8 24.4 26.7 44.4 4.4 0.0 0.0   95.6
Table III-5. SELF-INJURY.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 40 5 12 6 3 0 2 28 23
% 58.8 17.9 42.9 21.4 10.7 0.0 7.1   82.1
Table III-6. IMPULSIVE VIOLENCE
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 30 9 11 14 3 1 0 38 34
% 38.2 23.7 38.9 36.8 7.9 2.6 0.0   89.5
Table III-7. ADHERENCE toSAMNESS.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 29 7 7 15 4 6 0 39 29
% 42.6 17.9 17.9 38.5 10.3 15.4 0.0   74.4
Table.III-8. OBSESSIVE COMPULSIVE BEHAVIOR.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 45 2 4 9 1 6 1 23 15
% 66.2 8.7 17.4 39.1 4.3 26.1 4.3   65.2
Table III-9. RITUALISTIC BKHAVTOR.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 46 9 7 12 0 1 0 22 21
% 67.6 9.1 31.8 54.5 0.0 4.5 0.0   95.5
Table III-10. UNDERSTANDING.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 3 14 37 37 4 5 0 65 56
% 4.0 21.5 56.9 56.9 6.2 7.7 0.0   86.2
Table III-11. COMUN1CATI0N.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 0 2 18 38 2 8 0 68 58
% 0.0 2.9 26.5 55.9 2.9 11.8 0.0   85.3
Table III-12. ABILITY of COMVERSATION.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 0 1 5 16 9 37 0 68 22
% 0.0 1.5 7.5 23.5 13.2 54.4 0.0   32.4
Table III-13. PARTICIPATION in GROUP-ACTIVITY.
  NP CN +++ ++ + ± - Total CN〜++
No 5 5 13 30 8 7 0 63 48
% 7.4 7.9 20.6 47.6 12.1 11.1 0.0   76.2
 

NP:
初めから問題なし、NPのパーセンテージは女性または男性の全例におけるパーセントである。
CN:
100% または完全に正常化。
+++:
75 〜 99% 改善。
++:
50 〜 74% 改善。
+:
25 〜 49% 改善。
±:
0  〜 24% 不変。
−:
症状悪化。
−からCNまでのパーセンテージはNPを除いた合計のパーセントを意味する。

5.結語

この報告は自閉症の研究者に情報を提供するのが目的である。
この治療において睡眠障害が最初に改善され、多動、パニック、自傷、そして、突然の暴力、コミュニケーションのむつかしさが続く。此れらの現象は自閉症の緊張が緩んだことを示唆している。そして、他の問題は徐々に改善する、何故ならば、彼らは彼らの緊張が緩んだ後にそれらを学習するからである。
特筆すべきことはコミュニケーションの改善である、私が知っている限りでは、これは自閉症にとって最も困難な問題の一つである。漢方の効果のメカニズムは明確に理解されていない、しかし、漢方は現在の他の精神安定剤よりも自閉症の情緒障害の改善に最も貢献する薬剤であることを強調したい。